会社案内
TCFD提言に基づく情報開示
はじめに
資産運用会社としての至上命題は、お客様の利益に貢献することです。中長期的な利益への貢献には、投資先が持続的に成長していること、投資先の事業活動を支える環境社会の持続可能性が保たれていることが重要です。
当社は、ESGステートメントにおいて、気候変動をサステナブル重要課題(マテリアル課題)の一つとして設定しており、責任投資や投資先との対話など投資活動における環境課題の考慮や、事業運営における環境負荷軽減に取り組むことを通じ、パリ協定が目指す脱炭素社会への移行へ貢献します。
2022年12月、当社は、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に賛同しました。TCFD提言に基づき、気候変動にかかるガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標、および当社ポートフォリオに対する気候変動関連分析結果を開示します。
また当社は、2024年3月、2050 年までに投資ポートフォリオの温室効果ガス排出量のネットゼロ実現(以下、「2050 年ネットゼロ」)を⽬指す 「Net Zero Asset Managers initiative」(以下「NZAMI」)に参画しました。当イニシアチブに基づく2030 年中間目標や、当目標達成に向けたアプローチ(移行計画)も開示します。
ガバナンス
当社は、気候変動を経営の最重要課題の一つとして認識し、気候変動がもたらすリスクと機会、目標や対応方針、取組状況については、年1回以上、経営会議にて審議を行ったうえで、取締役会に報告しており、適切なガバナンス体制を構築しています。
リスク管理部門における当社ポートフォリオの気候変動リスク計測、当計測結果を踏まえた運用部門における責任投資およびスチュワードシップ活動への活用、営業部門によるネットゼロに沿う投資商品にかかるお客様との対話、コーポレート部門における事業法人としての気候変動への対応等については、各部門の担当役員の指揮のもと遂行され、企画部門担当役員は、各関係部門と連携して気候変動にかかる全社方針や具体的な計画および実践状況をとりまとめます。
戦略
当社は、気候変動に伴うリスクと機会について、以下の通り認識しています。
リスク | 気候変動に伴う、資源枯渇、異常気象、生態系の変化等を通じて、投資先(国・企業等)の、財政・財務状況や政治経済状況が、急性的あるいは慢性的にネガティブな影響を受け、投資資産の価値が毀損する。 脱炭素社会への移行に伴う、環境規制の強化(法規制リスク)、既存技術の陳腐化や新技術開発コストの増加(技術リスク)、顧客行動の変化や原材料コストの上昇(市場リスク)、特定企業・特定産業への非難や取引忌避(風評リスク)等を通じて、投資先(国・企業等)の財政・財務状況や政治経済状況が、急性的あるいは慢性的にネガティブな影響を受け、投資資産の価値が毀損する。 |
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機会 | 気候変動、脱炭素社会への移行に伴い、投資先(国・企業等)が事業機会や収益機会が拡大する等のポジティブな影響を受け、投資資産の価値が向上する。 気候変動、脱炭素社会への移行に対応した、投資先(国・企業等)の行動変容やビジネスモデル変革により、投資資産の価値毀損が防止される。 |
また、気候変動を重視するお客様のニーズに十分に応えた価値提供ができないことによるレピュテーションリスクの増加と、それに伴う運用資産残高の減少、国内外における気候変動関連の法規制強化に伴う対応コスト増加を認識する一方、気候変動問題への対応に貢献する運用商品へのニーズ増加をビジネス機会として捉えています。
上記の認識を踏まえ、当社はESGステートメントに基づき、以下に取り組みます。2050年ネットゼロに向けて、①エンゲージメント、②商品提供、③情報提供(啓発)を移行計画の3本柱とし、対応を強化しています。
取り組みアプローチ | 取り組み状況 | |
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スチュワードシップ活動 (エンゲージメント) |
投資先(国・企業等)とのエンゲージメントや議決権行使を通じて、気候変動問題への対応促進、脱炭素社会への円滑な移行、情報開示の改善を働きかける。 | ・当社は、GHG高排出企業(上場株式・社債にかかるGHGの70%を排出する約60社)を優先エンゲージメント先として選定し、重点的に対話し、当該企業のネットゼロ整合性判定※も実施しています。現時点では、ネットゼロ整合と判定される企業は多くないことから、各企業の課題をマイルストーン管理のうえ、脱炭素ビジネスへの移行をサポートすべく、継続的に対話します。 ・気候変動という地球規模の課題では個々ができることには限界があるため、協働や、様々なチャネルを活用したマルチエンゲージメントが大事です。Climate Action 100+を通じた米国企業3社に対する協働エンゲージメントや、ESGインデックスの更なる改良等に向けたデータ・プロバイダーとの対話、政策エンゲージメント(Investor Agendaによる気候危機に関する政府向けグローバル投資家声明への署名)なども実施しています。 |
商品提供 | お客様の価値観やニーズの変容に応え、気候変動問題の解決や脱炭素社会への移行を促進するような、ESG要素を考慮した運用プロダクトの開発・提供を行う。 | ・当社は、カーボンエフィシェント指数やParis-Aligned Benchmarkに沿った商品提供をしています。また、顧客の選好に応じて一般炭企業には投資しないなどの投資ガイドラインを設定しているファンドも運用しています。ネットゼロに沿う商品の更なる提供に向けて、ネットゼロ投資の調査・研究や、お客様との対話を継続します。 |
情報提供(啓発) | 気候変動問題やESG投資にかかる現状や、対応することの重要性にかかかる情報提供を行う。 | ・当社は、地域金融機関向け勉強会への出講や、証券取引所やデータプロバイダー等が主催するセミナーへの登壇などを通じて、機関投資家や事業会社、広く一般に対して、情報提供を行っています。世の中で気候変動の重要性の理解が進み、脱炭素に向けたアクションが加速するよう、今後も情報提供を継続します。 |
責任投資 | 気候変動や脱炭素社会への移行に起因するリスクや機会を把握、分析し、投資判断や投資先選定に組み込むことによって、投資パフォーマンスの向上に努める。 | ・当社は、アセットクラスごとにESG投資フレームワークを定めており、マテリアル課題の一つとして気候変動を投資判断や、ポートフォリオ管理、日々のモニタリング等に組み込んでいます。詳しくは、「スチュワードシップ活動のご報告 」 ご覧ください。 |
事業運営 | 持続可能なエネルギーや資源の利用など、GHG排出量削減に向けた取り組みを行い、環境負荷の低減に努める。 | ・2023年のオフィス移転時には、100%再生可能エネルギーを使用しているビルを移転先として選定しました。加えて、電力使用量そのものを抑制すべく、オフィス機器の購入にあたっては、グリーン購入法および国際エネルギースタープログラム適合のものを選定しました。 |
※パリ協定の目標に向けた投資フレームワークである 「Paris Aligned Investment Initiative (PAII) による Net Zero Investment Framework (NZIF)」 に沿って、①野心、②目標、③パフォーマンス、④開示、④戦略、⑥資本配分、の6軸で投資先企業のネットゼロ整合性の判定を実施。当フレームワークは世界で広く採用されている。
当社ポートフォリオのシナリオ分析結果は「ポートフォリオの状況」をご覧ください。
気候変動ストレスがポートフォリオ全体に与える財務的な影響は限定的ですが、パリ目標と整合的になるようポートフォリオのGHG排出量削減に向けて、責任投資、スチュワードシップ活動、商品提供、情報提供等、気候変動の緩和と適応に貢献する取組みを進めます。
リスク管理
気候変動リスクは、特定の独立したリスク分野ではなく、市場リスクや信用リスク、非財務リスク(評判リスク等)など、さまざまな分野のリスクの不確実性を高め、増幅しうる要因であると認識しています。
当社では、外部評価機関が提供するデータや分析ツールを用いて、ポートフォリオ全体や、投資商品別、投資先別のGHG排出量や気候変動リスクを計測しています。また、公開情報のほか、外部評価機関が提供するデータやエンゲージメント活動等を通じて得られた情報を、ESG評価に組み込むことで、投資先の気候変動に関するリスクと機会を把握しています。
エンゲージメント活動においては、GHG排出量や気候変動への対応状況などを総合的に勘案し、優先的に対話する投資先の選定につなげています。
上述の気候関連情報のESG評価への組み込みやエンゲージメント活動など、戦略の項に記載の責任投資やスチュワードシップ活動の実践が気候変動リスク管理につながると認識し、その手法や取組状況については、責任投資委員会や経営会議にて定期的に報告、審議のうえ、年次にて取締役会に報告しています。
指標・目標
気候関連の機会とリスクを評価するために、自社運用または外部委託する国内株式、外国株式、国内債券および外国債券について、GHG排出量関連の主要指標(GHG総排出量、カーボンフットプリント、炭素強度、加重平均炭素強度)や、その他気候変動リスクに関連するデータを計測しています。計測にあたっては、外部評価機関MSCI社が提供するデータや分析ツールを利用しています。
当社は、気候変動に関連するリスクと機会を適切に把握し、エンゲージメント、商品提供、情報提供等を通じて、脱炭素社会への移行に貢献することを目標としています。当社は、2050年ネットゼロを目指すNZAMIに参画しました。ネットゼロに向けた 2030 年中間目標として、上場株式および社債を対象に、そのカーボンフットプリント(投資1単位当たり温室効果ガス排出量)を 2019 年比半減(50%削減)するという目標を設定しました(2019年時点のカーボンフットプリント:46.4 tCO2e/百万米ドル)。中間目標の詳細は、当社ホームページ
をご覧ください。
当社ポートフォリオのGHG排出量は、「ポートフォリオの状況」をご覧ください。
事業活動を通じたGHG総排出量は以下の通りです。オフィスが100%再生エネルギーを使用していることから、ネットゼロを達成していますが、今後も電力使用量削減に向けた取り組みなどを継続します。

ポートフォリオの状況
GHG総排出量等主要指標
当社ポートフォリオのGHG総排出量等の主要指標は以下の通りです。
MSCI社が提供するデータを用いて、農林中金全共連アセットマネジメント株式会社が集計したものです。
自社運用または外部委託する国内株式、外国株式、国内債券および外国債券のISINコードを基にデータを取得し、欠損値は除外しております。
国内および外国債券については、国債およびバンクローンを除きます。
スコープ1及び2の温室効果ガス(GHG)排出を考慮しています。
スコープ1=企業が直接管理する排出源、つまり製品やサービスを生み出す事業から発生する排出量。
スコープ2=企業が消費する電力を生産する際に発生する間接的な排出量。
PCAF (Partnership for Carbon Accounting Financials) ガイダンスに則り、直近利⽤可能な最新数値を使⽤して計測しています。
総炭素排出量(Total Financed Carbon Emissions):ポートフォリオに関連したGHG総排出量。算出式:Σ[(発行体のGHG排出量)×{(保有時価)÷(発行体のEVIC)}]
カーボンフットプリント(Carbon Footprint):ポートフォリオ時価100万USDあたりのGHG排出量。算出式:(総炭素排出量)÷(ポートフォリオ時価)
炭素強度(Carbon Intensity):売上高100万USDあたりのGHG排出量。算出式:(発行体のGHG排出量)÷(売上高)。ポートフォリオレベルでは、総炭素排出量をポートフォリオに割り当てられた投資先企業の売上高で除して算出。算出式: (総炭素排出量)÷Σ{(保有時価/発行体のEVIC)×売上高}
加重平均炭素強度(Weighted Average Carbon Intensity):ポートフォリオ内の投資先企業等の個社毎炭素強度を保有ウエイトで加重平均。算出式:Σ[{(GHG排出量)÷(売上高)}×{(保有時価)÷(ポートフォリオ時価)}]
EVIC(Enterprise Value Including Cash):現金および現金同等物を含む企業価値。算出式:期末株式時価総額(普通株式、優先株式などの種類株式)+非支配株主持分+有利子負債
移行リスク・物理的リスク
MSCI社が提供する気候バリューアットリスク(CVaR)という指標を用いて、当社ポートフォリオの移行リスクおよび物理的リスクを算定しました。
CVaRとは、気候変動による投資証券価値の毀損リスクと定義されます。
- 移⾏リスク(政策リスク):気候変動対応に要する発⾏体の費⽤負担による投資証券の価値変動
- 移⾏リスク(技術的機会):企業が有する脱炭素化技術特許評価による投資証券の価値変動
- 物理的リスク:気候変動による企業資産や企業活動への影響による投資証券の価値変動
CVaRは、気候変動シナリオのもとでポートフォリオの価値がどれほど変化するかを試算するもので、例えば1.5℃シナリオのCVaRが▲5%の場合、当シナリオにおけるポートフォリオ価値が5%減少することを意味します。
パリ協定との整合性分析
MSCI社が提供するImplied Temperature Rise(ITS)という指標を用いて、当社ポートフォリオのパリ協定の温度目標との整合性について分析を行いました。ITSとは、投資先の開⽰情報・脱炭素⽬標から今後の累積的なGHG排出量を予測し、パリ協定の2℃シナリオとの乖離をもとに気温上昇影響を測るものです。
当社のポートフォリオのうち約49%がパリ協定2℃シナリオに将来整合的であることが確認できました。当社ポートフォリオがパリ目標と整合的になるよう、責任投資、スチュワードシップ活動、商品提供等、気候変動の緩和と適応に貢献する取り組みを進めます。
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